2017年06月19日

子どもの気持ちを裏切ってはいけない

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中丸小学校での講演の日、控室から中休みの校庭を覗くと、汗だくになりながら子どもたちと遊んでいる先生の姿を見かけました。バスケットコートでは見事なステップインシュートを決める先生に、羨望のまなざしを送る子ども達の姿もありました。本気で遊んでくれる先生がいる。この事実が子どもたちにとってどれだけ大きな意味を持つか、言葉には尽くせません。教育の原点を見た思いがして、心に爽やかな風が吹きました。

賑やかな校庭を眺めていると、ふと卒業生のナレシュのことを思い出しました。

ナレシュは15才の時に2年生に中途入学した児童で、それまで複数の支援団体から就学援助を受けたものの、さまざまな理由で中途退学を繰り返していました。ヒマラヤ小学校に入学が決まった時には、他の団体から「気を付けた方がいい」と助言を受けたこともありました。

そんなナレシュでしたが、ヒマラヤ小学校に入学してからというもの高熱が出ても登校するほど学校好きになりました。それまでの不足を補って余りある程、先生や支援者がナレシュに愛情を注ぎ、”存在を認められた”ことがナレシュを変えた事は間違いありませんが、もうひとつ、ナレシュを変えたのはドッヂボールでした。

ナレシュはドッヂボールが上手で、みんなから一目を置かれるようになったのです。「ナレシュがチームにいたら勝てる」。そんな声を聞く度にナレシュがどんどん自信をつけていることがよくわかりました。ナレシュの成長を間近で見ることが出来、僕たちも本当に嬉しく思いました。

ある日のこと。ナレシュが「明日もドッヂボールしようよ」と言ってきました。断る理由はありません。僕は深く考えることなく「もちろん、いいぞ」と即答しました。その時、翌日が休みであることを僕はすっかり忘れていました。後で気づいた時も、「休みだからナレシュも分かるだろう」と気にしませんでした。

翌日、夕暮れになって学校の前を通ると、寂しそうな顔をしたナレシュが、ひとり階段に腰かけている姿がありました。ドッヂボールをするため朝からずっと僕を待っていたのです。

ナレシュの気持ちを裏切ってしまった…。鋭利なナイフで突かれたような痛みが胸の奥まで響きました。どんなときも子どもの気持ちを裏切ってはいけない。そんな当たり前のことを教えてくれたのは、ナレシュでした。



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