新学期から1ヶ月「希望」という名の女の子

2012年05月25日

ラビナの優しさ

5月25日

ヒマラヤ小学校の子ども達の素晴らしさは、なんといっても他人――特に弱者――を思いやる健気な優しさに尽きると思う。チョコレートを貰った時は、家にいる小さな弟や妹にあげたいとポケットに入れて持って帰ったり、遠い山道を下級生の手を引いて歩いたり、時にはおんぶしてあげたり、弁当を持っていない子には自分のチウラやトウモロコシを分けてあげたりと、子ども達の底なしの優しさに胸を打ち、人間としての優しさについて考えさせられることばかりだ。そんな心優しい子ども達の中でも、最も優しいと(僕が勝手に)思うのは、まちがいなく2年生のラビナだろう。

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ラビナは学校から歩いて1時間半ほどの小高い山の上の集落で暮らす穏やかで心優しい女の子だ。これまでラビナが友達と争ったり、不機嫌な顔を見せたりしたところを僕は一度も見た事がない。目が合うと必ずニコリと返してくれる、一言で言えば天使、いやお釈迦様のような女の子だ。

新学期が始まる前の春休み、先生たちとラビナの暮らす集落へ家庭訪問をした。その日、最後の訪問先だったのがラビナ宅。朝から家庭訪問が続き、先生達も皆くたくたになっていたのだが、ラビナの家に着くと、きちんと人数分のゴザがしかれ、さらに飲み水や洗顔用の水まで用意されるなど、とても気持ちよく迎えてくれた。全部、ラビナが準備したそうだ。ラビナの細やかな心遣いのおかげで、皆、疲れが吹っ飛んだ。母親の話では、ラビナは先生達が家に来るのを朝から心待ちにしていたそうで、何度も何度もゴザを敷き直したりしていたそうだ。

家庭訪問が終わり、ラビナの家を後にした帰途の道中、後ろから誰かが駆け寄ってくる足音がした。ふと振り返ると足音の正体はラビナだった。僕達に追いつくとラビナは息を切らせながら僕のそばに寄って、僕の上着のポケットに何かを入れてきた。中を見るとビスケットが2枚。「どうしたの?」とラビナに訊くと、ラビナは「さっきお腹が空いてるって言ってたから・・・・」と言って、はにかんだ。

なんでも家庭訪問を終えラビナの家を出るとき、(万年欠食児の)僕が「あ〜腹減った〜」とひとこと漏らしたそうだ。僕が漏らした一言のために、わざわざ追いかけてビスケットを届けてくれたのだ。その後、大きな夕陽を背に僕達の姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれたラビナ。ラビナの優しさに胸を打たれ、この日は夕日が少し滲んで見えたような気がした。ラビナは本当に優しい女の子だ。







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この記事へのコメント

1. Posted by たま   2012年05月27日 23:26
暖かい気持ちを頂きました。

ラビナちゃんありがとう!
2. Posted by 吉岡大祐   2012年05月27日 23:54
たま様 コメントをいただきありがとうございます。ラビナの海よりも深く、山よりも大きな優しさは、ヒマラヤ小学校の自慢です。
新学期から1ヶ月「希望」という名の女の子