熱い友情乙女の祈り

2011年06月12日

熱い友情2

6月12日

校長ユブ・ラージにSの看病を任せた後、暫くしてフォーレストルームに戻ると、ユブ・ラージがさっきと変わらぬ姿勢で団扇代わりにした絵本を仰ぎながら、熱心にSの看病をしていた。汗も出ていないのにSの額を拭くところなどユブ・ラージらしいが、彼は本当に心優しい男なのだ。

これだけユブ・ラージの献身的な看病を受けるSは果たしてどんな気持ちなのだろう、そんな事を思いながらSの様子を見ていると、Sがときどき薄目を開けてユブ・ラージの様子を伺っている事に気がついた。体調は良くなったもののユブ・ラージがあまりにも一生懸命看病するので、Sは起き上がろうにも起き上がれなくなってしまったのかもしれない。普段から活動的なSだけに、ずっと横になっているのは結構つらいはずだ。それに今日はSが夢中になっている空手の稽古の日。上手くユブ・ラージを納得させないと空手の稽古にも参加できなくなってしまう、そんな不安をSが覚えていたのかどうかはわからないが、ちょっぴり困った様子がSの行動から伝わってきた。

「もう、そろそろ起きられるか?」僕がSに訊くと、Sではなくユブ・ラージが「まだ、駄目です。」と即答した。このままでは埒が明かない。ユブ・ラージの気持ちを尊重しつつ、Sが起き上がるきっかけを作ってやらねばと思案に暮れていたところ、出張から戻ってきたヤッギャ校長がSの様子を見にやって来た。

既にヤッギャ校長には電話でSが失神を起こした事を伝えていたが、改めて事の経緯とユブ・ラージの献身的な看病の事、そしてユブ・ラージが心底Sの事を心配している事を伝えると、ヤッギャ校長は突然ユブ・ラージに錠剤のような物を渡し「これをSに飲ませてやってくれ。これでSは元気になるから。」と言って、ユブ・ラージに井戸から水を汲んでくるように伝えた。

ユブ・ラージが水を汲みに行く間、ヤッギャ校長はSに「薬を飲んだら起きていい。ユブ・ラージには薬が効いた、と言ってあげるんだよ。」と伝えた。ヤッギャ校長がユブ・ラージに手渡したのは実は単なるビタミン剤だったようだ。つまり偽薬をSに飲ませることでユブ・ラージを納得させようという考えのようだ。

水を汲んできたユブラージはSの体を起し、「さぁ、薬だ。苦いがしっかり飲めよ」と言いながら、ゆっくりとSに薬を飲ませた。薬を飲んだ途端、Sは(予定通り)立ち上がり、ユブラージに向かって「薬が効いた!」と一言。なんとも間が悪く不自然だったが、ユブラージは「本当か。それは良かった!」と歓喜の声を上げて大喜び。ユブ・ラージの人の良さを改めて実感した瞬間だった。その後、二人は教室へ戻り、いつもどおり(仲良く)過ごしたようだ。

帰り際、ヤッギャ校長が「明日の朝礼でユブ・ラージを褒めてあげましょう」と話していたが、彼の人柄を再確認すると同時に、ヤッギャ校長という大人が傍にいるからこそ子ども達は何事にも精いっぱい頑張ることが出来るんだと思った。理解ある大人の存在が子ども達を成長させるのだ。



hsf at 12:48│
熱い友情乙女の祈り