プスパの縄跳び教室山の上の村へ その2

2010年09月11日

山の上の村へ

9月11日

棚田このところ心身ともに健やかなせいか、活動にも自然と身が入っている感じだ。特に治療活動は長い間のスランプが嘘のように、伸び伸びと取り組む事が出来ている。技術的には全く向上していないのだが、意気込みだけは猛烈に盛んで、一人でも多く治療したいと勇躍しているような状態だ。施術者として、これだけ気力が充実しているのは本当に久しぶりのこと。そんなわけで今日は山の上の村へ往診に出かけることにした。

目指した村はヒマラヤ小学校から6〜7キロ先にある山の上の小さな村々。今年は例年よりも雨が多いため、所々で大きながけ崩れが発生していた。長雨による農作物への影響を懸念していたが、幸いなことに稲は順調に生長しているようだ。途中の丘から見た一望千里の棚田は、強い太陽の光が照りつけ、きらきらと煌いていた。これから収穫の時期に向け、棚田は色を深めていく。

川出発して2時間、山の裾野に着くと、子ども達が小川の水を石で堰き止め、水遊びをしていた。首都カトマンズから直線距離だと僅か十数キロ。ここではカトマンズの喧騒や生活が嘘の様に穏やかな生活が営まれている。カトマンズでは近年の狂気的な経済によって、人々は富の拡大を生活の向上と誤認し、生活そのものを失いつつある。そんなこともあってか、余計、子ども達の素朴さが胸を打った。


患者暫く子ども達と遊んだ後、再び山の上の村を目指して山道を歩きだしたのだが、昨夜の大雨の影響で道がかなり抜かるんでいたため、一歩ずつ足元を確かめながら慎重に歩いた。通常なら1時間あまりで着くところ、裾野を出発して2時間近く掛かって、ようやく最初の目的地の村に到着した。

この村は山間に広がる小さな集落で、僕が往診に通い始めてもう10年になる。鍼治療への理解もずいぶん深まっているので、活動しやすい環境だ。村の女性達は総じて働き者で、その分、関節痛などに苦しむ人の割合が多いようだ。今日はこの村で5件ほど往診を行った。治療をしながら今年は雨が多いことや収穫期を迎えたトウモロコシの話、来月のダサイン祭りの事など他愛もない話で盛り上がった。

この村の貧しさは今も変わりはないが、最近、この村がとても美しく、豊かに映るのは、上記の通り、カトマンズを中心にした都市部の人たちが、生活そのものを失いつつあるからだろう。貧しく、厳しい生活の中で人々が支えあい、長年続けてきた生活をしっかり守っているところに、この村の豊かさを感じることが出来る。

少年治療を終えた後、更に上の村へと向かった。道中、どしゃぶりとなったので近くにあった民家で休ませて貰うことになった。家の中では13歳の少年が、集めてきた飼い葉の整理に忙しくしていた。この少年、学校へ行っていないそうだが、将来の夢を尋ねると、「学校の先生」という答えが返ってきた。いつか少年の夢が叶う日は来るのだろうか、そんな事を思いながら、村の変わらない貧しい現状に小さなため息が毀れた。


赤ん坊つづく



hsf at 04:37│
プスパの縄跳び教室山の上の村へ その2