スラムで単独医療キャンプ「国際識字の日」のイベントに職業訓練所が出店

2010年09月08日

失敗から学ぶ

9月8日(水)

ショールヒマラヤ小学校 2010年・夏のイベントの中で行われた職業訓練所の製品のチャリティ販売は大勢の方のご協力を頂き、ほぼ完売することが出来た。予想外の良い結果に随喜すると共に安堵の胸をなでおろした。

今回のチャリティ販売の目玉商品のひとつに刺繍を施したパシュミナショールがあった。刺繍作業は職業訓練所で最も力を入れてきた活動の一つだ。元々、サリの刺繍作業から始まった活動は、生徒たち自らのアイデアでサリ以外のクルタスルワールやハンカチ、マフラーへの応用が行われるようになり、今回は日本でのチャリティ販売に合わせ、やはり生徒たち自らの考えでパシュミナのショールに刺繍を施すことになった。

サリを着る習慣がない日本で、サリに変わる物としてパシュミナのショールを選んだことは、僕達からすれば当たり前の発想かもしれないが、村から出る機会の殆どない職業訓練所の生徒たちが自ら考え、実行したことに一つの大きな意義があると考えている。

失敗チャリティ販売ではパシュミナショールの人気も高く、15枚のうち13枚が売れる良い結果となったのだが、実は売れ残った2枚は、洗濯の時に出たと思われるシミで、正直、商品として店頭に出せないような代物だった。中には制作した生徒の熱意を買いたいと、購入を申し出てくださった方もいたのだが、やはり問題を皆で共有し、今後の活動に少しでも活かしたいとの考えから、売れ残った2枚をネパールへ持ち帰り、皆で話し合うことにした。

実は職業訓練を始めるにあたり、僕が一番心配していたのは「品質」に対する考えだった。日本と違い、“蘊奥を究める”という習慣が殆どないネパールでは、「品質」に対する考えが残念ながら甘い。ネパールの国民性なのだと思うが、例えば職業訓練所で販売している蝋燭など、明らかに曲がった物も堂々と売られている。もちろん使い方次第で問題なく使える物だからネパールでは通用するだろうが、いくらチャリティとはいえネパールの考えをそのまま外国に押し付ける訳にはいかない。それに少々回り道をしてでも、きちとした物を作り出していけば、将来、必ず生徒達の自信や誇りとして返ってくると僕は信じている。「品質」に対する考えをいかに植えつけていくか、その辺りが活動の発展の鍵になるのではないかと思う。

汚れ先日、チャリティ販売に関する報告会を行った時、売れ残った2枚のショールを見せ、刺繍作業に関わる生徒や関係者が話し合った。暫くすると刺繍の周りにあるシミに気がついたようで、皆、合点がいった様子だった。作業を行った生徒の話によると、刺繍に使った糸が統一されておらず、洗濯した時に安価な糸から色が染み出たのではないかとの結論だった。その後、皆で解決策についても検討することとなり、今後は使用する材料を全て統一することや、チェック項目を表にして、袋詰めの前に最終確認作業を行うことなどが決まった。

「失敗の最たるものは、失敗したことを自覚しないことである」と英国人評論家のトーマス・カーライルは言っている。今回、生徒や関係者が自らの失敗を自覚し、品質について真剣に話し合ったことは大きな成果であり、今後に大きな希望を持つことが出来るのではないだろうか。失敗から多くを学び、漸進して欲しい。



hsf at 04:54│
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