車座外務省連携会議

2009年06月20日

インフレ

6月20日

先日、ヒマラヤ小学校の卒業生の一人が口を尖らせながら学校へやって来た。普段は笑顔の絶えない子の異変。まずは水を飲ませ、落ち着かせてから話を訊くことにした。

卒業生の話によると、進学した中学校の教師から授業中に、どの学校から来たのか訊かれ、「ヒマラヤ小学校」と答えると、「あの雑草を食べる学校か」と言われ、同級生から笑われたのだという。5年間、勉強した学校の事を馬鹿にされたのだから、怒るのも無理はない。 

ネパール(カトマンズ盆地)は現在、強烈なインフレに直面している。いわゆるバブル経済のような状況だ。出稼ぎ労働者による外国送金が活発に行われた事で、銀行が金余りの状況になり、積極的に貸し出しを行っている事が投機目的での住宅建設に繋がり、インフレを更に助長しているようだ。

こうした急激なインフレが貧しい人々の生活を更に苦しめられているのは周知の事実で、ネパールの食事に欠かせないダール(豆)など、以前は80ルピーだったものが、現在では140ルピーまで値上がりしている。この現状だけでも、いかに異常なインフレかお分かり頂けると思う。

姉妹先日、ヤッギャ校長の自宅を訪ねた時、家の裏の畑でヒマラヤ小学校に通う姉妹が、せっせと何かを摘んでいるのを見かけたので傍に寄ってみると、袋の中には雑草が入っていた。姉妹は「野菜を買えないから、お母さんから雑草を摘んでくるように言われた」と話していた。ヤッギャ校長によると、姉妹が摘んでいた雑草は食用にもなるとの事だったので全く気にならなかったが、村の中にはこうして雑草を食べる事を笑う人もいるようだ。

卒業生の進学先の教師が言ったのも、恐らくヒマラヤ小学校の児童のこうした様子を見かけたからだろう。「そんな事で腹を立てる必要はないよ」と卒業生を宥めつつ、弱者を蔑む人間の愚かさに、小さなため息がこぼれた。


hsf at 02:44│
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