尼寺で脳血管疾患の治療お楽しみ会

2008年01月05日

二ロージュ

1月5日(土)

二ロージュ1ヒマラヤ小学校の児童の中には、勉強よりも体を動かすことの方が得意、という児童が複数いる。こちらが一々言わなくても自ら率先して学校の手伝いをしてくれる、とっても頼りになる連中だ。校庭で何かの準備をしようとしていると、教室の窓から身を乗り出して、“出番ですか?”と言って来たり、重たい荷物を手にして学校の階段を上っていると、教室を飛び出して手伝ってくれる事もよくある。そんな頼り者の中の一人が、3年生の二ロージュ(13)だ。

二ロージュは口唇口蓋列を患っているため発声に障害がある。口唇口蓋裂は幼少期に手術を受ける必要があるそうで、既に13歳のニロージュは手術による治療を受ける事が難しいようだ。ただ入学当初に比べ、ニロージュの発声は明らかに改善しているように感じる。ニロージュは真面目で心優しい性格なので友達も多い。学校に入学した事で話しをする機会が増えたことや、友達とみんなで大きな声を出して遊ぶ事がニロージュにとって良かったのかもしれない。

今日は昼からチャンピ村へ往診治療に出かけた。途中、バイクの調子が悪くなったので、知人の家にバイクを止め、村に通じる森の中を通って近道をしていると、森の木陰から僕の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。恐る恐る近づいてみると、其処には斧を持ち、顔を汗でびっしょり濡らした二ロージュが立っていた。話を聞いてみると、体調不良で寝込んでいる父親の代わりに薪割りに来たのだという。こんなに遠くまで薪を割りに来るのかと驚きつつ、暫くの間、ニロージュの仕事を見ることにした。

二ロージニロージュは斧を振る手つきも良く、慣れた様子で次々に薪を割っていった。体を動かす事が大好きなニロージュらしく、上手く薪が割れた時など実に生き生きとした表情をしていた。休憩中に彼の掌を見て見ると何個もタコの潰れた跡があり、正に仕事をしている人間の逞しい掌だった。僕も一寸だけ薪割りを遣らせて貰ったが、4、5回、斧を振っただけで、すっかりへたってしまった。

途中、ニロージュは寒がっている僕のために火を起こし、一生懸命割った薪までくべてくれた。その上、近くの木によじ登り木の実を採ってご馳走してくれた。ニロージュは本当に心優しく、逞しい男の子だ。ニロージュ達と接していると、学校の教育以外にも大切な事が沢山ある事を教えられる。

ヒマラヤ小学校では開校以来、卒業生の自立を目標に様々な活動を行ってきた。現在、建設中の3階校舎には卒業生を対象にした職業訓練所の開設も予定している。未だ詳細を纏めている段階だが、将来、ニロージュのような子供たちが学校で学んだ基礎知識を生かし手に職を持つ事が出来れば、彼らの経済的な自立は決して夢ではないと思う。その事が結果的には学校の継続にも繋がると僕たちは信じている。焚き火を囲みながらニロージュと話したひと時、子供たちの自立への想いを新たにした。



hsf at 03:46│

この記事へのコメント

1. Posted by スズキ   2008年01月15日 21:08
人に聞いたり調べても、なかなか詳しくは分らないのですが、ネパールで職を得るということは大変だと聞いています。子供たちが、それぞれ自分の得意な分野で能力を伸ばし、自立できる事を心より祈ります。
それを手助けする吉岡さんや先生たち、応援しています。今年もヒマラヤ小学校にとっていい年でありますように。
2. Posted by 吉岡 大祐   2008年01月16日 02:12
スズキ様
温かいコメント、本当にありがとうございます。開校以来、子ども達の自立を大きな目標に掲げています。まだまだ道半ばですが、ヒマラヤ小学校の子ども達なら必ず、実現できると信じています。今は日本の皆さんに支えて頂いているヒマラヤ小学校を、何時の日か卒業生の力で運営する事が僕達の夢です。一生懸命頑張ります。
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