新入生へ制服を配布他校との連携と慰労会

2007年06月27日

ある児童の問題

6月25日(水)

僕が日本へ一時帰国している間、ある児童(3人兄妹)の母親が死亡した。父親は不在のため、結果として兄妹3人だけになってしまった。その後、同じ村に暮らす叔母が一番上の姉から順次、3人を引き取ると申し出たそうだが、母親が死亡して間もない頃、突然、その叔母がヒマラヤ小学校を訪ね、一番上の姉は自宅近所の学校に通わせると一方的に話し、児童の退学を申し出たそうだ。

本人の意思を確かめずに退学を受理する訳にはいかないと、ヤッギャ校長は叔母の申し出を保留扱いにして暫く様子を見ることにしたそうだが、どうも実際には叔母の話にはおかしな点が多い事が分かった。1ヶ月近く経っても児童は近所の学校へも行っておらず、毎日、畑仕事をしている事も分かった。更に調べてみると、どうもこの叔母は長女である児童を年内に結婚させ、残りの2人の弟達をカトマンズ北部の工場で働かせるつもりである事を公言している事も分かった。更に3人の兄妹が暮らす小さな家の売却までを進めているという。

ネパールに到着した日にヤッギャ校長からこの一件について報告を受けたが、この時、一番気がかりだったのは、結婚と称した人身売買の恐れだった。人身売買は親類が関わっているケースが多く、この児童のように13歳くらいと未だ幼く、十分な判断能力を持っていない子は人身売買の危険に晒される事が多い。過去にはヒマラヤ小学校の児童が兄弟に人身売買されたケースもある。また親戚が孤児の財産を奪い取るケースも良くある事だ。まずは児童本人の気持ちを確認すべく児童を学校へ呼んで事情を聞くことにした。

児童日曜日、児童は幼い弟達の手を引き、俯いたまま学校へやって来た。目には薄っすら涙を浮かべていた。未だ母親の突然の死を受け入れられていないようだ。お祭りの話などをして児童を落ち着かせながら、ヤッギャ校長とモンゴル先生が現状についてゆっくり訊ねると、ヤッギャ校長の報告通りの事実が確認できた。また学校で勉強を続けたいかを確かめると、『ヒマラヤ小学校で勉強を続けたい』と、はっきりとした答えが返ってきた。こうなれば一刻も早く児童を叔母から引き離し、自分達で生活できる環境を作らなければならない。ヤッギャ校長が児童に、学校が叔母と話をするから、何も心配せず自宅へ戻り、明日から通常通り学校へ来るように告げた。

その後、ヤッギャ校長、モンゴル先生の3人と一緒に児童の叔母宅を訪ね、今回の一件について話をした。ネワール語での会話だったので完全には理解できなかったが、かなり激しい遣り取りが行なわれた。2時間半ほど遣り取りが続いた後、話し合いは終わった。

ヤッギャ校長によると叔母側からは、今回の件に関して余計な介入をするな、など様々な苦情を言われたようだが、結局、児童を自宅に戻すことが決まったそうだ。学校に関してもヒマラヤ小学校への復学が決まった。児童の生活については叔母側に責任を一切求めず、ヒマラヤ小学校の児童福祉基金(毎月、児童から5ルピーずつを徴収し、貧困家庭に子ヤギを与えるなどして救済する基金。救済を受けた家庭は子ヤギを育て、その子ヤギが大きくなって子を産んだときに、子ヤギ一頭を基金へ返却する。卒業時には全額を児童に返金。)で可能な限り救済すること、ヤッギャ校長が理事を勤めている村の農業共同組合の有志と話し合い何らかの救済措置を講じることや、休みを利用した職業訓練を行う事で纏まったそうだ。まずは児童の希望通り、学校への復学が決まって一安心。今後、おそらく困難にも直面すると思うが、なんとか皆で知恵を出し合って児童を支えていきたい。

その後、児童は月曜日、火曜日、水曜日と毎日、元気に学校へ通っている。今日は元の底抜けに明るい笑顔も見せてくれた。今回の一件、学校として児童の家庭問題にどれだけ介入すべきなのか正直、僕として考えさせられた。ただ児童を取り巻く環境や、ヒマラヤ小学校が家庭的な教育環境を目指している事を考えると、やはり児童一人ひとりの些細な問題にも誠意をもって対応することが正しいと思う。

今回、叔母側との話し合いの中で、ヤッギャ校長が1人の児童を必死に守ろうとする姿はとても印象に残った。またそれに加えて嬉しかった事は、ビディヤ先生や他の先生たちも児童のことを心配し、何度も児童に会いに叔母宅まで足を運んでいた事だ。先生たちのこうした行動こそが、“ヒマラヤ小学校で勉強を続けたい“という児童の声に繋がっているのではないだろうか。

*この児童は現在も元気に学校で勉強を続けています。


hsf at 02:09│

この記事へのコメント

1. Posted by 亘 恵   2007年07月06日 21:01
5 こんないつも元気いっぱいで優しい子供達がつらい状況に立たされて泣く事を聞く度ネパールの子供達の厳しい現実を実感します。

でも、ヒマラヤ小学校には吉岡さんや、校長先生、先生方がおられるからいつもいつも安心します。

私はどうしても今、遠く離れた子供達や私のスポンサーしている3人の子供の近くにいれないけど安心して日本にいられます。

それは吉岡さんや、先生方のお陰です。
本当にありがとうございます。
2. Posted by s_date   2007年07月19日 21:17
親を亡くした子供達にとって、見守ってくださる方々がある事は、どんなにか力強く感じたことでしょう。
子供の家庭問題への介入、子供を守るのは誰か、何が子供を守ることになるのかと微妙な問題もあり、苦慮される様子が痛いほど判りました。また子供達への生活支援のあり方など、細やかな配慮があり この支援活動私などは微力ですが、皆様方と共に継続して行かねばと思っているところです。
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