進路家庭訪問

2005年06月17日

サシナの涙

6月17日(金)

朝からヒマラヤ小学校を訪問。昨日、子ども達がケナフの観察を行ったようで、子ども達から『なぜ昨日、来なかったの〜?ケナフ観察したよ』と自慢気に言われた。ケナフ観察では色々な発見があったようで、子ども達から聞く話がとても楽しかった。

職員室でヤッギャ校長と話をしていると、2年生のサシナが『頭とお腹が痛いです』と辛そうな表情を浮かべてやって来た。水曜日にも同様に体調不良を訴えていたため帰宅を促したが、学校で休みたい、と言って帰宅しなかった。今日もヤッギャ校長がサシナに帰宅して休むよう勧めると、サシナは首を振って、学校に残りたい、と言った。サシナの不安げな表情を察したヤッギャ校長が『家で何かあったの?』と優しく尋ねると、サシナは突然、涙を流し泣きはじめた。

サシナには軽度の知的障害がある。そのことが原因で、どうもサシナは親から暴力を振るわれているらしい。サシナは涙を流しながら、『家に帰ったら怒られる。お母さんは弟だけを大事にしている。』と訴えていた。ヤッギャ校長の話では、サシナの親はサシナの将来を絶望視しているそうだ。水曜日にはヤッギャ校長のアドバイス通り、サシナが母親にヘルスポストへ連れて行って欲しいと頼むと、母親はそんなお金はないと、サシナに暴力を振るったそうだ。何とも胸の痛くなる話だ。

泣き止まないサシナを休ませ、早速、ヤッギャ校長とサシナの家を訪ねた。農作業から帰ってきたばかりなのか、汗で顔を光らせた母親にサシナに対する暴力について尋ねると、『サシナはちっとも言うことを聞かない。だから叩いただけ。あんな病気を持っている子なんて産まなきゃよかった』と、興奮気味に答えた。質問を続けたが、どんな質問にも『サシナが病気だから』としか答えず、ヤッギャ校長の話の通り、母親がいかに絶望的になっているのか良く分かった。ヤッギャ校長が母親に『この2ヶ月半でサシナは変わりましたよ。学校へ来れば必ず良くなるから、暴力を振るうことだけはやめてください。今度、サシナへの暴力を確認したら学校として警察へ通報します』と、伝えサシナの小さな家を後にした。

社会福祉整備が著しく遅れているネパールで、障害児を持つことがどんなに大変なことか、よく分かる。しかし全ての望みを棄ててはいけないと思う。学校として出来ることはなにか、やはり職業訓練を通して、将来、サシナが経済的に自立できるようにすることが大事だと思う。まだまだ道のりは長く険しいことを痛感した。


hsf at 21:03│
進路家庭訪問