2006年10月

2006年10月30日

村での医療キャンプ

10月30日(月)

調査ヒマラヤ小学校から歩いて約3時間のところにある村を訪ねた。この村はカースト制度の中の被差別階級の人々が暮らす貧困の村だといわれている。カトマンズから僅か14キロの距離にありながら、教育が著しく遅れ、保健衛生や医療らしきものは一切ない厳しい現状の中で人々は暮らしている。何とかこの村で医療キャンプを開催できればと思い、今日はヤッギャ校長、モンゴル先生、優さんらと現地を訪ね、実態調査を行った。

ダヌワール子供数年前、ヒマラヤ小学校の開校準備の現地調査を行う中で、初めてこの村を訪ねた時、感染症で高熱を出した2人の兄弟が家畜小屋で放置されている現状や、肝炎に罹患したと思われる子供が腹水の症状でお腹を大きく膨らませている現状、また感染症で耳から大量の膿が噴出している幼児の現状を目の当たりにした。あの時、なんとか基本的知識の普及さえ出来ればと、悔しい思いをしつつ、現状を変えるにはどれだけの時間がかかり、それは果たして可能なのか?、ため息をつきながらヤッギャ校長と話し合ったことを覚えている。

ダヌワール老人今日は約1年ぶりの村訪問だったが、やはり現状は厳しかった。消毒をしていないため傷口から感染した子供。骨折したまま治療もせず放置され子供。他にもさまざまな厳しい現状を目の当たりにした。病気で苦しむお年寄りが、『他の村の人々から苛められた。病気になっても病院に通う事が出来ない、いっそうのこと死んでしまいたい』と、涙を流しながら窮状を訴えてきた。貧しいだけでなく、被差別階級に属している事から厳しい虐げを受け、その上、病気を抱えていれば、涙だって出てくるだろう。お年寄りの涙に心打たれる思いだった。

消毒2持参した薬で子供たちの傷口を消毒したり、村人に痛み止めを配布しながら、一応の現地調査を終えた。目を覆いたくなるような現状に、ため息の耐えない実態調査だったが、『必ず来ておくれ』と、涙ながらに手を握ってきたお年よりの期待に応えるためにも、まずは医療キャンプ実施に向けた行動を起こしてみたいと思う。

消毒*村では某NGOの協力でトイレ建設の話が進んでいる。公衆衛生の普及にトイレは欠かせない。ただし、トイレを建設しても、結局、ニワトリ小屋になっているケースがネパール各地の村で見られる。トイレ建設と平行して公衆衛生教育の普及が欠かせない。なんとか、その辺りでも協力が出来ればと思う。








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2006年10月27日

ケナフを求める声

10月27日

カンティプール今日の朝刊カンティプールに西ネパール・ジュムラ郡で行った現地調査の記事が大きく掲載された。カンティプール紙のこども向けのコーナー『コピラ』に掲載された事や、特に現地の小学校で行ったケナフを使った紙すきや環境教育に関する記事が中心だった事もあり、子供たちや教育関係者からの反響が大きく、問い合わせがつついている。昨日のサダナさんの受賞記事の中でもケナフ活動が大きく紹介された事も大きい。

これまで活動を行ってきたカトマンズ盆地以外の人々からケナフを求める声が上がっていることは本当に嬉しく、今後の活動の大きな足がかりとなりそうだ。ただ、注目を集めている分、今まで以上に責任を持った行動が求められる。出来ることから一歩ずつ活動を進め、地域に根ざした形で、社会に役立つ活動へと発展させたい。




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2006年10月26日

サダナさん21世紀若者賞受賞

10月26日(木)

サダナ1子供たちの将来の自立を目指したケナフ活動(天然資源ケナフをつかった環境・教育・産業活動)で、中心メンバーとして活躍しているサダナ・タパ(19)さんが、平成18年度の社会貢献者表彰第3部門『21世紀若者賞』(社会貢献支援財団)を受賞することが決まったサダナさんの直向な努力が認められたこと本当に嬉しく思う。心から祝福したい。

サダナさんと知り合って約5年。当時、まだ14歳だったサダナさんが環境を良くしたいと高い意識を持ち、さまざまな困難にも挫けず努力を続けている姿に、大きな衝撃を受けた事を今も鮮明に覚えている。

サダナ2まさか現在のように活動を一緒にするとは夢にも思ってなかったが、これまで予想を超える形でケナフを求める声がネパール国内で高まっているのも、サダナさんの努力によるところが大きい。常に学ぶ姿勢を崩さないサダナさん謙虚さ、若さ溢れる行動力。サダナさんの活動からは学ぶべき点が本当に多い。

今日はネパール主要各紙がサダナさんの受賞ニュースを大きく取り上げ、紙面を賑わせていた。出演したラジオ番組で語った『この受賞を様々な分野で頑張っている若者と共に分かち合いたい』というサダナさんの謙虚な言葉に、今後の更なる活躍を確信した。 掲載新聞:カトマンズポスト紙、カンティプール紙、ヒマラヤンタイムス紙、アンナプルナポスト紙、ゴルカパットラ紙、ライジングネパール紙、ラジダニ紙(いずれも10月26日付け)

サダナさんは11月20日、常陸宮殿下ご列席の下で開催される授賞式(東京)に参加予定。ぜひ日本訪問の機会に世界の見聞を更に広めてほしいと願っている。


*写真は2枚とも門谷優さん撮影



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2006年10月14日

ローゼルティ試食会

10月14日(土)

ローゼル2今日は『ケナフ・みどりの少年団』の拠点校として位置づけているプスパ学校の文化祭に参加し、ローゼルティの試食会を行った。

ローゼルはケナフと同じアオイ科芙蓉属の1年草で、タイやカンボジアなどで食用として栽培されている。ヒマラヤ小学校でもケナフと共に昨年から栽培を行っているが、子ども達からも大人気で、昼休みには畑に行って美味しそうにローゼルの葉を食べている。


ローゼル試食今回は『みどりの少年団』の活動の一環として、子ども達が中心となりプスパ学校の文化祭でローゼルティの試食会を開催することとなった。肌に良いこともあってか特に女性から好評で、あっという間に用意していた40杯が売り切れてしまった。売り上げは全額をプスパ学校の特待生(貧困家庭から通う子ども達)のために寄贈することが出来た。今後、ローゼルティの生産も視野に入れて、頑張っていきたい。子ども達の自立のために出来る事は、何でも挑戦したいと思う。

それにしてもプスパ学校の『みどりの少年団』の子ども達は礼儀正しく、テキパキとしていて気持ちが良い。これまでいろんな学校を訪ねたが、プスパ学校の子ども達と一緒に行う活動が一番楽しい。試食会が終わった後は、子供達と一緒に出店のオヤツを食べたり、輪投げをしたりして、楽しい時間を過ごす事が出来た。

ローゼル
ローゼルティ


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2006年10月12日

貧しくても夢のある社会

10月12日(木)

籾干しダサインが終わり、各地で稲の収穫が盛んに行われている。ブンガマティ村でもバス停の前に敷かれた筵の上で、籾を干す作業が行われている。日本ではほとんど目にする事がなくなった光景を興味深く見ていると、作業を手伝う子ども達の中にヒマラヤ小学校の児童や里親教育基金の奨学生、寺子屋の子ども達がいた。みんな小さな体を一生懸命動かして働いている。慣れた作業とはいえ子供たちにとっては重労働だ。作業に汗を流す子ども達を見ていると、9月下旬に訪ねた西ネパールの僻地・ディリチョール村の事を思い出した。


ディリ子供西ネパール(極西・中西部)の多くは90年の民主化以降、政府からあらゆる面で見放され、今でも多くの人々が貧困に喘いでいる地域だ。今回、農業指導を行うための現地調査を目的にディリチョ―ル村を訪ねたが、そこで僕たちが目にしたのは『絶対的貧困』だった。貧困の現状は東ネパールやカトマンズ周辺の村々でも目にした事はあるが、西ネパールの現状は特に厳しく、果たしてこの現状を変える手立ては本当にあるのだろうかと、懐疑的になってしまった。

稲ディリチョール村は標高約2700メートルにある小さな山間の村だ。通常の稲の生産限界(2000メートル)を超えている場所だが、村では稲作が行われていた。しかし稲は貧弱で実る籾の量もカトマンズ周辺の稲に比べ遥かに少なかった。これでは村の人々が米を口にする機会がほとんどないのも頷ける。稲の他にヒエ、アワ、トウモロコシ、小麦、ジャガイモ、ヒヨコマメなどが生産されているようだが、一部を除いて売るほどの収穫量はなく、ほとんどの農家では家族数人が食べるだけの量すら生産できないという。*稲の写真は門谷優さん撮影

厳しい現状を抱える村だが、しかし大きな希望を見つけることもできた。村には14年前に日本のNGOの支援で建てられた学校があり、予想以上に教育が根付いているのだ。今ではディリチョ―ル村だけでなく、周辺の村からも大勢の子供たちが学びに来ている。14年間という年月を経て、着実に教育が根付いている様子を目の当たりに出来たことは、僕にとって大きな学びの収穫だった。

ディリチョール風景今回、現地をご案内いただいたカルナリ協会の清沢さんは、ディリチョール村をエコ・ツーリズムの拠点として発展させたいという大きな構想をお持ちだ。それも資本主義的なものではなく、すべてを村営にして、村の人たちが参加したエコ・ツーリズムを構築したいと話されていた。そのためにも、先ずは腹を空かせた村人たちが腹いっぱい食べられるよう農業開発を行いたいそうだ。本当に素晴らしい構想だと思う。僕たちとしても出来ることでお役に立てればと考えている。

村には湧き水が流れる美しい川、目前に迫る雄大な山々、そしてそこに暮らす純朴な人々の営みがある。他にもガンジローバという美しいヒマラヤ、少し歩けば温泉まである魅力的な村だ。世界中どこでも見かけるような看板すら立っていない、ひなびた村の景色だって一見の価値はあるだろう。

ジュムラ絶対貧困の中に見た『希望』。貧しくても夢や希望のある社会こそ、僕たちの目指すべきゴールではないかと思う。




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2006年10月11日

スポンサーシップ

10月11日

栄養摂取プログラム今日はヒマラヤ小学校で栄養摂取プログラムを開催した井戸の水が涸れて以来、思ったような活動が出来ていないが、今回は調理が出来ない分、子ども達が大好きな果物を多めに加えることにした。これから水問題についても、真剣に考えていかなければならない。児童数が増えれば現在のように水を汲んでくるだけでは間に合わなくなってしまう。悩みは耐えない。

今日は放課後、栄養摂取プログラムについて先生達と話し合った。せっかくの活動を単に栄養を補うだけではなく、やはり『自立』という大きな目標に結び付けていきたい。そのためにも、ぜひ学校でヤギやニワトリの飼育をやってみたいと考えている。子ども達が直接、飼育に携わり、ヤギから絞った乳やニワトリが産む卵を栄養摂取プログラムの中で食べる事は、自立意識の高揚に繋がるのではないかと思う。将来は子ヤギを貧困家庭に配る事だって可能になるかもしれない。今日は先生達ととても建設的な意見交換が出来た。ぜひ一つひとつ、実現に向けて頑張りたいと思う。

ヒマラヤ小学校のスポンサーシップ制度が始まって半年、なんと現時点で35名分もの支援が決まった。僅か半年の間に、こんなにも大勢の方から暖かいご理解とご支援を頂いたこと、感謝の気持ちでいっぱいだ。日本の各地でヒマラヤ小学校を紹介する活動等も開催され、ヒマラヤ小学校は今までにい盛り上がりを見せている。ぜひ1人でも多くの方にヒマラヤ小学校の事、そして一生懸命がんばっている子ども達の事を知って頂ければと願っている。

ディポック今日はスポンサーシップの支援者の方から頂いた手紙を子供達に届けたが、心待ちにしていた手紙に奨学生はとても喜んでいた。手紙の他にも似顔絵や笛(カメレオンのように飛び出す笛、名称が分かりません)などのプレゼントもあり、奨学生だけでなく他の子ども達、そして先生達もとても喜んでいた。手探りで始めたスポンサーシップ制度だが、支援者と奨学生の素晴らしい交流が実現している事は何よりも嬉しい。ぜひもっと有意義な活動を目指して頑張りたいと思う。


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2006年10月10日

ヒマラヤ小学校始業

10月10日(火)

ダサインの間、少し体調を崩してしまった。9月末の西ネパール訪問を終えて以来、レポートの作成や新聞社との打ち合わせ等で無理が祟ったのかもしれない。ダサインを迎えいつも以上に混沌として猥雑なカトマンズの町の雰囲気にも、負けてしまったように思う。

今日は1時間45分かけて徒歩で学校を訪ねた。途中、収穫を終えたばかりの田んぼに菜の花がぎっしり咲いていて、とっても綺麗だった。歩いていくと普段、気がつかない様々な発見があって、なかなか面白い。

始業今日からヒマラヤ小学校で2学期が始まったダサイン祭りと10月下旬のティハール(ディパワリ)を合わせて、1ヶ月以上の休みを取る学校が多いが、休みが長いとどうしても子どもを働かせてしまう親がいて、退学者が出てしまう。そんな現状も踏まえ、ヒマラヤ小学校では休みを2週間だけにした。

2学期が始まったとはいえ2週間すれば、またティハール休みが始まるため、暫くはオリエンテーションが中心の授業となる予定だ。子ども達が一番楽しみにしているお祭りだから、この時期、子ども達が勉強に集中することは難しいと思う。

今日は子ども達の元気な様子が見られて嬉しかった。みんな事故もなく楽しいダサイン休みを過ごした様で本当によかった。今日から暫く賑やかな毎日が続きそうだ。



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