勉強再開試験に思う

2005年03月14日

優しさと厳しさ

先日から学校を休んでいる兄弟がいた。少しひ弱そうな感じの兄弟なので、季節の変わり目で風邪でも引いたのかと思い込んでいた。少し気になり、兄弟の近所にくらす児童に尋ねると『もう2人とも学校には来ないよ』と、思いがけない返事が返って来た。理由を尋ねると、『シャム先生が怖いから』とのことだった。

シャムさんは20歳になったばかりの若い先生だ。彼の教育への熱意が買われ、昨年12月からブンガマティ村の寺子屋を担当している。ヒマラヤ小学校でもボランティア教師として、他の先生が不在の時に授業を行っている。

シャムさんの授業は厳しい。彼が教室に入った途端、子供達に緊張感が走り教室が静まり返る。あんなに元気いっぱいの子供達をよく纏めることが出来るなぁと、感心してしまうほどだ。授業を終えたシャムさんは、授業中とは打って変わり、子供達と仲良く遊んでくれる優しいお兄さんとなる。僕はシャムさんを見て、『若いのに上手いなぁ』と感心ばかりしている。

『シャム先生が怖いから』という話を聞いて、早速、ヤッギャ校長と兄弟の家を訪ねてみた。兄弟は僕らが来たのを知ると、軒先で申し訳なさそうにしていた。兄弟の話では、妹が一度シャムさんに大声で怒られて以来、怖くて学校へ行けなくなったそうだ。

普段、親から叱られ、社会からも虐げられている子供達にとって、シャムさんに怒鳴られたことは、自分達の居場所を失くした様なものなのかもしれない。

翌日、ヤッギャ校長からシャムさんに事情が伝えられた。ヤッギャ校長から事情を聞いたシャムさんは、言い訳を一切せず問題を起こした事について詫び、『兄弟に謝りにいきます』と言って、兄弟宅へ向かった。

前日のように軒先にいた兄弟は、シャムさんを見ると途端に怯えきった表情を見せた。シャムさんは子供達の前に座り、学校のことや兄弟が大好きな動物のことなどをゆっくり話した。

子供達の表情が少し和らぐと、『今まで、君達のことをちゃんと考えていなかった。ごめんなさい。』と、幼い兄弟に心から謝り、『一緒に学校へ行こう』と子供達を誘った。子供達は何も答えなかったが、2人とも明るい表情を見せていた。

今日、兄弟は元気よく学校へ来た。そしてシャムさんと良く遊んだ。僕はシャムさんと兄弟が、とても強い信頼の絆で結ばれたように感じた。

教育には『優しさと厳しさ』両方が必要だと思う。しかし優しさも厳しさも、限度を超えてしまうと子供達を混乱させてしまうことがある。

言い訳を一切せず、子ども達に謝ったシャムさんは立派だった。こういう先生達がいるから、子供達も安心して学校で学べるのだと思った。

日本でもネパールでも、教育は人との関わりが創り上げるものだと思う。教育は本当に奥が深い。

今日も良い日となりました。



hsf at 05:16│
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